ivataxiの日記

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クリスタル灰皿

タツの上にはいつでも大きなクリスタルの灰皿があった。親父はヘビースモーカーだった。いつも家には缶ピー(缶入りピース)が買い置きしてあった。団地でつつましい生活の割には豪華なタバコ環境であった。親父はお酒を飲めなかったから余計にタバコに走ったのかもしれなかった。その大きなクリスタルの灰皿は様々な色をしていた。琥珀色や透明など、特に琥珀色がタバコの色に合うようだ。アニメのルパン3世に出てくる銭形警部の灰皿のように、いっぱいに積もったタバコの吸殻が、ぼくの幼児期の記憶の生活風景には欠かせない。タバコがすっかりなくなると、親父は灰皿の中の比較的ましな吸殻を選別して吸い出すのだ。そのためのツールとしてキセルがあった。パイプというのは専用のタバコみたいで、キセルなら吸殻を最後まですうことができた。キセルは単なるパイプのような機能なのだ。キセルといえばインディアンや浮世絵の女性が思い出される。アメリカ大陸を発見して世界にもたらした害の中では「梅毒」と「タバコ」が有名と聞いている。お客さんが来たときには「卓上セット」にたいな物で接待するというのも当時はあったと思う。オヤジは100円ライターは使わない人で、結構高級なライターをいくつも持っていた。ジッポのオイルライターはメラメラと炎が重く踊った。オイルもいい香りだった。かくして、数年後肺がんが発症してしまったのであった。