ivataxiの日記

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中古時間旅行

かつては船や飛行機で世界旅行に行ったという時代もあったとか。やがてパソコンやDVDでバーチャルな旅行を楽しむのが主流となっ た。3Dは立体的な擬似体験を可能にした。最近、タイムマシンが発明されたが、まだ特権階級のおもちゃである。庶民は迷わず中古を買うことになる。安いが それなりに当たり外れもあり、良し悪しだ。その店は中古のパソコンのハードなどを扱うお店として始まったようだ。今ではパソコンを作る会社も使う人もな い。現在の人気なのは、中古タイムマシンである。後ろにカバンのように背負うのだが、古いのは大きく重く不格好だ。店内を物色して出物のタイムマシンを ジャンクコーナーで見つけてた。店員のじいさんは「ジャンクコーナーの動作の保障はないけど、構わんかね?」と無表情に聞いただけで持ち出しの手伝いもし なかった。自宅ガレージで実験だ。中古タイムマシンを背負って旅行設定のボタンを押す。ただそれは30日しか未来には行けないタイムマシンである。背中が 少し熱を持ち微妙な振動がある。目の前30日後に行ってみたがそこには「人類の痕跡」がすでになかったのである。いったいどうしてそんなことになってし まったのか訳がわからないのだだが、命からがら元の時間に逃げ戻って来た。ほんのついさっき、この中古のタイムマシンを買った店に、買ったばかりのタイム マシンを返品に行ったものだから、店員はけげんな顔だった。「今度はジャンクじゃなくて、店で一番程度の良いタイムマシンを買うから。これ返品じゃなくて 交換ということでよろしく」というと店員は意外に笑顔だった。やはり最新型には劣るが中古の中では最高級の機能のこのタイムマシンは軽い。しかも1年過去 にも未来にも行ける。一年前ならこのタイムマシンが出た頃だから、部品も調達できるはずだ。1年前のこの中古販売の店で店員としてバイトしていれば、30 日後の 人類の破滅を見ることなく、時代を行ったり来たりして何とかやり過ごすことができるだろう。そういえば、あの店の店員の中に、ぼくそっくりなじいさんがい たような気もしだしたのであるが。