ivataxiの日記

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電動鉛筆削り

電動鉛筆削りに憧れたがうちにはなかった。母は四角いカミソリで良く鉛筆を削っていたが子供の手には負えない感じだった。小さい手回しの鉛筆削りを 普段は使った。シャープペンシル全盛の現在ではピンと来ない話である。もっと小さい先だけ削るのもあったが、持ち運び用だ。実際それで削るとどんどん鉛筆 の芯が折れてしまう。不経済なのだ。シャープペンシルもあったがうちでは鉛筆が主だった。高校になり3年からマンガ部を作ることになった。実は漫画研究会 がありそこに入会すれば良かったのだが、学校の意向で「部」になった。しかも顧問の先生は女性で「部長は3年男子に限る」という強行な意見で3年男子はぼ く一人だったから決定だった。その初回会合でそれまで女性部長がやっていた漫画研究会の3年と2年全員が辞めてしまった。部室は無く美術部に間借りだっ た。残る1年も全員女性で、しばらく誰も来なかったから、ぼく一人が美術部と美術室に寄生虫状態が続いた。マンガと美術・・世間での評価はどっちが高いの だろう?そんなこと聞かなくても美術が高いに決まっていた。「マンガ」と聞くと先生たちも眉をしかめた。そんな時代である。マンガは深夜一人で描いていたから日中美術室でぼくはぼんやりすることになる。ただでもぼんやりしたヒトがもっとボンヤリしているのだから少し心配になる。美術部の部長はY君で、出展作品に真面目に向かう姿は「いかにも部長」という人。後に「工作舎」という所に行くことになるがまだその時はわからない。K君に鉛筆の削り方を教わった。彼は教え方が上手だった。以来、自分で少しづつ修練して削れるようになった。I君は自分で削った鉛筆をイラストレーションボードを切って、ペーパーセメントで箱に組み上げ専用鉛筆入れを作っていたのでマネさせてもらった。この二人は共 に後美術関連の大学に進学することになる。時間は一気に飛ぶ。10年ほど前、3年間近くの専門学校でイラストを担当したことがある。デジタルメディアとい う学科の生徒たちでぼくはパソコンがわからないから、単に手で描くイラストの担当だ。私立高校から持ち上がりの生徒がほとんど。あまり授業に期待がないよ うだ。最初「では鉛筆を削ります」というと、目を輝かせて集まって来た。彼らは生まれながらにして自宅に電動鉛筆削りがあり、しかも普段は全部シャープペ ンシルだから削る必要はなかった。また、カッターナイフもあまり使わないみたいだ。高校の頃K君に教わったように実演した。イロイロ授業で教えたとは思う のだが、この時の実演が一番目を輝かせたようにも思う。今はほとんどボールペンばかり使っているのだが、実は鉛筆の不確かで柔らかい線はとても好きなのである。