ivataxiの日記

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場末の支那そば屋

子どもの頃は、外食なんて稀有な状況だった。だから、たとえ「ラーメン」だって立派な外食だ。どの町にも同じ位の大きさで、同じ位のロウでできたサンプルのラーメンが、店舗の前のガラスケースに飾ってあるような場末の支那そば屋というのがあった。ドンブリの器の内側にはカクカクした四角い模様や龍があしらわれていた。おつゆは満タンではなく8分目。麺は少なめでチャーシューはオプションで、ささやかにモヤシ・ネギ・ナルトの薄切りなどがトッピングされている。外観だけでなく、おつゆ・麺などの味までもがよく似た味の支那そばだ。まだ、チキンラーメンなどのインスタントラーメンは存在しないか、あっても高価なイメージの頃。1ドルは永遠に360円固定が続くとさえ思われた時代のこと。今や、テレビでもグルメ番組が横並びに放映されて、そこそこ有名な芸人や歌手などが、それを食べて「う~ん。うまい」みたいにおきまりの表情・コメントに無感動なまま、テレビのこっちでは日常の食卓を無感動に頬張る。ラーメンチェーンもたくさんできた。でも、時折「あの子どもの頃に食べたそのまんまの支那そば」を恋しく思うこともあるのだ。