ivataxiの日記

絵 文章 映画

ビールのあわ

「趣味は絵を描くこと」と、履歴書には書く。
特に受賞したこともなく「ヘタの横好き」という奴。
人に「儲からないのになぜ絵を描くか?」と、たずねられたら
「自分でもわからない」と答える。だってわからないんだもん。
「ビールの泡みたいな物ですかね」と、思いつきを答える。
キンキン(特定の物を表す固有名詞ではなく形容詞・擬音?)
に冷やした良く磨かれたグラスに思いっきり冷やした
かろうじて凍らない温度のびんビールを、
グラスを最適な角度にキープして用心深く注ぐと、
うまくすればほとんど泡が立たないことがある。
それを特に運動もしないで、
散々どこかで飲んだあとの冷房がきいた店で飲むと、すごくマズイ。
夏の夜、デパート屋上のビアガーデン(もうそんなのないか?)で、
多勢酒飲み集団とわいわい騒いで、
温まった分厚いビアジョッキに勢い良く適当なりゆきに注いだ生ビールは
、多くが泡だったりする。
「この泡の料金はどうよ?」というシトたちは、
行ってはいけない大人の対応の場所なのだ。
逆に「この泡がうまいんだよ」という人もまずいないが、
文句をいう人も少ない。
ビアガーデンの生ビールは知的・理論的にではなく、
時の勢いなどで行き、
のどごしでゴクゴクグビグビと一気に飲むとうまいのだ。
「ストローおつけします?」と、聞かれても断るべきだ。
「うまい」というのは「美味しい」とは、厳密にとても違う気がする。
うまくは説明できないのだが。
ぼくにとっての絵を描くというもうからない趣味というのは、
そんな暑い日のビルの屋上ビアガーデンで飲む、
適当に勢いで注がれた生ビールの泡に近い立ち位置のように思う。