ivataxiの日記

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くらげ

ここは海辺。暖かい波打ち際である。波が寄せては返して行く。いつまでも、いつまでも。そこには、波に打ち上げられ取り残されてしまった「くらげ」が一匹いた。くらげは、次第に遠のいてゆく波を、恨めしく感じていた。陸の上にあっては、自分の力だけでは、この重い体も頭も、びくとも動かせないようなのだった。海流れに任せてならば、ゆらゆらと泳ぎの真似事はできたものを。波が引いてしまうと、砂地でさえも次第に水分を蒸発させて行くようなのだ。丸っこく水分を含んで大きく見えたくらげだったが、いつしかしぼんでしまったようにも見える。だが、まだ死んだ訳ではいない。「次の波が来るまでは、もたないだろうな?きっと」と、くらげは自問していた。やがて夜になった。暗い鏡のような波打ち際には、月明かりが美しく輝いている。気ままに夜光虫も光っている。だが、そこまではたどりつけない。すでに、くらげの形はしていても、水分は抜け、残骸のように感じる。「やはり、明日の朝までは無理かな・・」と、自問しているようだった。ゆっくりと大きく丸い月が空を動いた。反対側の空の下端をオレンジ色に染め太陽が昇ってくる。やはり、くらげは朝を待ち切れなかったようである。オレンジ色に輝く早朝の砂浜に、長いくらげのコバルトブルーの影がしばらく伸びていた。