ivataxiの日記

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シュタイン

フランケン アインシュタイン
「長生きはするものだなぁ」と、フランケンはしぼりだすようにとても低い声でいった。「科学が発達し、倫理が後退している今なら、手術でこの体を替えることができるかも?」と思ったのだった。アインシュタイン博士の頭脳がどこかに保存されていると聞いたが、ついに探し当てたのだ「おれは体は丈夫だがオツムが悪い。アインシュタイン博士の頭脳を移植すれば、鬼に金棒だろう?」と、自問した。ガードマンはフランケンの顔を見ただけで逃げ出した。冷凍保存の頭脳を、闇で手術する医者に渡した。ちょうど脳死の遺体があったので、フランケンの頭脳はそっちに移植することにしたのだ。「先生。ついでに、首にささったクギと、顔の傷も治して」と言い残して手術台に向かった。手術が終わり、フランケンは目を開けた。鏡の中の自分は、脳死した遺体の顔だった。このごくありふれた肉体はフランケンが一番求めていた物だったかもしれない。彼は、もう何もいらないくらいの幸福に包まれていた。一方かたわらを見ると、幾分普通の姿かたちに修正された、かつての自分が今目覚めようとしていた。そうだ、頭脳はアインシュタイン博士のはずだ。彼は鏡を見ると「アッカンベ~」をした。