ivataxiの日記

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湯船

久しぶりに自宅のお風呂を熱くして入る。湯沸かし器と蛇口ではなく途中の配管のどこかが壊れているのはわかるのだが、おおごとなので配管の人は帰ってしまった。配管が途中で壊れているので蛇口をひねってもお湯が少ししか出ない。元の湯沸かし器は、水道を遮断しないと点きっぱなしで危険なので勝手に止まるし、水は永遠に出っぱなしなのだ。次回修理に来てくれるのはいつなのか不明なので、このお湯が貴重な時代は長い氷河期のようにいつとは知れずに続くのだ。なので、非常に熱い湯船を少なめに入れて入る。「ぅうおぉおお」「あぢじぢ」という「浴槽お風呂場全裸熱さ我慢大会」の始まりだ。生死に関わる状況というのは記憶の螺旋を引き戻す。こんな熱いお湯といえば、新丸子の銭湯に最初に入り、熱いので水で薄めようと大きな蛇口をひねった。老人が「おい、お湯がさめるだろ」と、べらんめぇ〜口調でいう。川崎市の下町は江戸っ子か?と、疑う余地もなくすごすごと引き下がった。それにしても熱い。地獄の釜はこんなだろう。少し体を浮き上がらせると、お湯面のあたりが濃いピンクに変色している。老人たちとてそれは同じ。誰が先に出るかを牽制して見定めてから少しでも遅く出るのが江戸っ子下町の心意気ってもんなのだろう。お湯の温度が湯船ではなく調理の釜の温度に近い。きっと、ぼくの味のスープが出ているだろうな。