ivataxiの日記

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ファンシーケース

随分昔のことになるが、一人暮らしをしていた。小田急の参宮橋という駅である。それまで、下宿みたいな感じが多く、自分の家具はあまりなかった。参宮橋に は当時、劇団四季があり、ダンサーを目指す友人がチャンス求めて喫茶店でバイトしていたのだ。海外巡業の話があり、この立地を手放したくないが知人に使っ てもらえたなら・・という話だった。中学の同級生だった彼は、結局、コーラスラインのオーデションに合格した。のちにアメリカに渡りダンスの振り付けをし ているようだ。良かった。約ひと月分のお金で、そこにある家具一切を購入した。コタツ・テレビは大きい方で、湯沸かし器やコンロなど細々した物も役立っ た。途中から同じそのアパートに住む女性から勉強机をいただくまではコタツがすべてだった。ダンサーを目指す彼は、着るもののセンスが良い。身長は同じく らいだが、顔が小さく手足が当時としては長く、いわゆるイケメン・・この罪作り・・という顔立ちだから、神は不公平だ。彼の謎の家具があり、それは「ファ ンシーケース」と呼ばれた。白と黒の模様で暑いビニールの匂いだった。縦と横にチャックがあり、四角いその箱状の空間に隠してしまうことができる。四畳半 しかない空間なので、ありがたい。金属のパイプを組み立てた立体にビニールを着せている感じだ。そのあと何度か引っ越してどこかに消えたが、独身の頃の思 い出に結びつくアイテムの一つだと思う。