ivataxiの日記

絵 文章 映画

五右衛門風呂

五右衛門風呂なんて知らないですよね。昭和のテレビでは「時代劇」「西部劇」などがなぜか多かった。関西では吉本新喜劇・宝塚もあった。世間の大人はみんな江戸時代や武士の生活を芝居ではなくテレビでバーチャル体験していて世間話にも「大久保彦左衛門みたいに」とか「鞍馬天狗みたいに」というような表現が通用していた。石川五右衛門は義賊(お金持ちから盗んだ物を庶民に分け与えた)ともいわれたが、結局は盗賊の親方として「釜ゆでの刑」で亡くなったという。庶民はこういうお話が好きなので、みんな知っていてその釜ゆでにされた時に使われた釜を連想する形のお風呂のことを「五右衛門風呂」と通称で呼んでいた。五右衛門風呂は鉄でできていて、下から火を燃やして釜をゆでるみたいに温度を上昇させる。そこらで拾って来た木片や紙・オガクズなどで火をたくのだけれど、今はそんな木切れなんて落ちていない。風を送るために口で吹くだが、あまり顔を近づけると熱いから、長い筒で火の近くまで風を送るのだ。釜の中の人に熱さを聞いて確かめながらでないといけない。今と比べてなんともスローライフで悠長なお話なのだが当時の人はそれが当然なので必死だった。入る人は裸になりドラム缶というかオナカの膨らんだ樽に近い形の風呂の中に入る。内側の鉄の表面に直接肌を着けると熱いので底の足を置く用に、木の丸いゲタみたいな物を足でゆっくり沈めて乗る。しっかり底にうまく丸さがはまったら「ああ良い湯だ」とようやく吐息を漏らすことができるのだ。気を抜いて「ズルっ」と、底の丸い木がもしズレると「あれれ」と湯船の中でずっこける。体をはったお風呂が五右衛門風呂なのだ。今では普通の自宅作りつけのお風呂に取って代わられて久しい。