ivataxiの日記

絵 文章 映画

茅ヶ崎海岸

学校が茅ヶ崎海岸に近く、授業で海岸を歩いたことがあった。湘南海岸はもちろん当時からサーファーのメッカだったにしても、いつだってバイトに追われていたのであまり関係なかった。代返を頼んでベンツでサーフィンに出かける友人がうらやましかったが、茅ヶ崎に住んで自転車でサーフィンに行くのも素敵に見えた。サーフィンをしない授業でただただ海岸を歩くという立ち位置のぼくにとっては、苦行に近い長い実習だ。視覚デザインの授業だったので、歩いた印象をあとで絵に仕上げるということもあり、ただボンヤリ歩くわけにも行かない。元来、遠足などでは本末転倒というか、先生が吟味した行き先の貴重な情報はすっかり忘れ、誰と歩いてどんな話をしたのか?ということの方が脳裏に刻まれるタイプで、成績は望めない。まだ加山雄三茅ヶ崎にホテルを所有していて、そんな話を誰かに聞いた。サザンオールスターズはほぼ同じ年令なのでまだテレビに出て来ていなかった。たくさんの人が同じ海岸を歩くのに、作品がみんな違う目線なのだ。貝殻・砂浜・波打ち際・そこに遊ぶ人々・恋人たち・サーフィン・・・空・海・みんな違う絵を描く。ぼくは砂に打ち上げられたコカコーラの缶とザリガニを描いた。エアーブラシのコンプレッサーが買えずに、缶のボンベで描いた。圧力が下がるので、二個を交互に使った。成績はともかく楽しかった。今、人生という長い砂浜をみんなと同じように歩いた。結果を絵に仕上げるとしたら、きっとこの時と同じような絵を仕上げるのだろう。目線というのはあながち若いころからそう変わらないように思う。人生の成績は悪くても「悪くない楽しい日々だった」と思えるなら、それなりに良いのではないだろうか?