ivataxiの日記

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輪島

NHK朝ドラの「まれ」は、輪島が舞台だ。東京の子どもが輪島に来て馴染むとか馴染まないとかいう辺りの話。その中に夏祭りが出てくる。
ぼくの18才は神奈川の専門学校一年生。金沢の同級生が「遊びに来て」という社交辞令を本気にして、結局、金沢の駅に寝た。今ならそんなことできないだろうし、新幹線が通った未来の金沢ではもっと無理。駅で寝ていたら途中で、駅員さんに追い出された。ぼくだけではなくもう一人旅の大学生も一緒だった。外のベンチで寝る。「新聞を巻くと少し温かい」と、彼から聞いた。翌朝、少し一緒に歩いたが二人は別なルート。ユースホステルを頼んで、穴水には泊まれた。輪島は観光をしたが、止まるアテはなかった。海を見ていたら、自転車に乗った同年代の女の子に声をかけられた。「泊まる所、あるの?」といわれ、首を振ると「一緒においで、頼んであげる」という。彼女はキツネが祀られた神社の手伝いをしていて、お金を貯めて少しずつ自転車で日本一周の旅を続けていた。女の子は建物の中に寝泊まりしていたが「どこの馬の骨かわからない男を一緒に泊める訳にはイカン」というので、鳥居近くの祠に寝ることになった。どうしても寝付けない。キツネの人形が何だかとても恐い。暗い中、段々近づく音・・・確かめるとただの虫(ウマオイ)だった。結局、祠から出て街中を朝まで歩いた。夏祭りの頃。赤い提灯がどこまでも灯っていた。そんな夏の輪島のことが「まれ」を見ていて思い出された。朝になり、ぼくは自転車の女の子とサヨナラをした。あの根性があれば、あの子はどこでも生きて行くだろうと思う。ぼくは、もう少し能登を見てから神奈川に戻った。